ARLNATA COLLABORATION

民谷螺鈿 代表:民谷共路氏より

螺鈿織とは

貝殻の真珠層を織り込んだ生地。 1979年、民谷螺鈿創業者の民谷勝一郎が引き箔技法を応用し完成させた。
和紙などの上に薄く板状に削った貝殻を貼り付けて定着させ、細く糸状に裁断したものを緯糸として織り込む。
開発のきっかけとなったのは正倉院展で螺鈿の宝物に魅せられたことと、工房が海に近く貝殻の入手が容易だったこと。
木などに貝殻を嵌め込む本来の螺鈿とは技法として異なるが、その名に倣い螺鈿織とした。
その後高級和装帯として製作を続け、現在に至る。その螺鈿織帯は時の皇后陛下もご愛用になった。
2006年からは、パリを中心にファッション用生地素材としての提案が行われ、
世界的ハイブランドのコレクションや高級腕時計の文字盤などに使用されている。
海の光が凝縮して閉じ込められた貝殻の真珠層を織っています。
螺鈿織は海の光を持つ織物です。

洋服という分野に生地提供することになった理由

日本の伝統技術と丹後の歴史風土から生まれた螺鈿織、
その独特な光を有する織物を「きもの」用途だけでなく、広く世界に届けたいという気持ちがずっとありました。
特にラグジュアリーファッションの分野はこの素材に向いていると思い、海外に出始めました。

ARLNATA(アルルナータ)と取り組む理由や展望など

もう5年以上前になるでしょうか、マレ地区のとあるレストランでパリの友人を介して寺西俊輔氏と出会いました。
初対面同士にもかかわらず、声を張り上げて意見をぶつけあったのを覚えています。
「日本のラグジュアリーブランドをつくりたい、それはつくり手(デザイナー、生地メーカ、縫製職人など)すべてが主役となる
新しいかたちのブランドだ。」という話を聞いたのもそのときでした。
身の程知らずではありますが、私にも民谷螺鈿として「きもの」の伝統技術を活かした日本独自のブランドをつくりたい、
その種だけでも残せたらという想いがありましたので、そのお話におおいに共感、感動致しました。
最高峰のブランドで活躍している寺西氏からそのような志を聞いたその時から、
現在もずっと、必要としてもらえることがあればいつでも一緒に仕事させていただきたいと思っています。
そして、寺西氏の取り組みは日本文化「きもの」の製造現場を継続させるために大きく貢献するものと信じています。

ARLNATA(アルルナータ )代表寺西 俊輔より

螺鈿織を知ったきっかけ

パリに移った翌年の2016年冬のプルミエールビジョンへ、
友人を介して紹介してもらった民谷さんからご招待いただき伺ったことがきっかけでした。
最初、「貝殻を織っている人がいる」という話を聞いたときは理解できませんでしたが、
実物を目の当たりにし解説を受け、
螺鈿織のベースとなる技術は帯の世界では普通に行われていることだと知った時は衝撃でした。
実際に訪れたブースはプルミエールビジョンの中でも
特に世界中から選ばれた手仕事に焦点を当てた素材だけが集まる所でしたが、民谷さんの螺鈿を始め、
自分には日本の伝統技術は輝いて見えました。
同じ素材を扱う身でありながら、また、長年“良い素材”には触れてきたつもりであった自分が、
まだまだ知らない世界が“着物”にはあるのだ。そう思い知らされた瞬間でした。
同時にその価格にも衝撃を受けましたが、日本でしか作れない、大量生産ができない、
技術的にも視覚的にもインパクトがある、ということでこれからのラグジュアリーにぴったりな素材で、
将来自分が独立して物作りをスタートすれば、間違いなく顔になる素材になるのだろうと直感したのを今でも覚えています。

ARLNATA(アルルナータ )にとっての螺鈿織とは

螺鈿織はその視覚的なインパクトと、貝殻という硬いイメージのものが柔らかい布になっているという、
両者の間の繋がりを想像し難いものであることから、実物をご覧になられる多くの人が関心を持たれているのを感じています。
着物の世界、特に紬素材は手仕事が素材の表面に現れる大変豊かなものなのですが、
わかりやすさという意味では玄人向けの素材だと感じており、色々な良い素材を見てきた人には伝わりやすいのですが、
テキスタイルにあまり知識のない人には理解していただくのに時間がかかりがちです。
その点、螺鈿織は技術的には伝統技術を利用し、材料的には新たな試みをした結果、
視覚的に強い印象を与える素材へとなっています。
そのため着物がいかに手仕事の粋を集めた世界であるかについて関心を持っていただくために、
特にARLNATAのような洋服を入り口として着物の世界に入ってもらうためには、無くてはならないならない存在だと感じています。
螺鈿織100%の洋服というのは実用性においてハードルが高いのですが、
洋服以外の分野では大いにその存在力を大いに発揮できるのではと期待しています。
今後は、アクセサリーであったり、インテリア製品であったりそういう分野での螺鈿織作品を通じて、
日本の着物の技術の素晴らしさを知っていただくきっかけを設けられればと考えています。

民谷螺鈿の螺鈿織について詳細は
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