ARLNATA COLLABORATION

白山工房(西山産業開発株式会社)
代表:西山 博之氏より

牛首紬とは

石川県、白山の麓、白峰(旧牛首村)に800年以上の昔から続く伝統の織物。
昔ながらの技法により、糸づくりから織りまでの約20工程を一貫生産しています。

二頭の蚕が共同で一個の繭を作り上げたものを「玉繭」(全体の2〜3%)と呼びます。牛首紬はこの「玉繭」から生まれます。
牛首紬にとって最も重要な工程、それは玉繭から糸を挽き出す玉糸づくりであり、
玉糸を挽き出す「のべ引き」作業は、玉繭から出る2本の糸が複雑に絡み合っているため、糸づくりが難しく、
あくまでも職人の経験とカンにたよらねばなりません。

牛首紬は伝統の技法で糸を引き、その絡み合った部分が牛首紬独特のネップとなっています。
この難しい作業によって挽き出された玉糸は、弾力性・伸張性に優れ、牛首紬の全ての風合いの根本となっており、
しなやかで身体になじみが良く、着物ユーザーからは「着心地の良い生地」、「着やすい生地」として高い評価を得ています。
また、大島紬、結城紬とともに日本三大紬のひとつとも称されています。

洋服という分野に生地提供することになった理由

長い伝統を持つ牛首紬は、第二次世界大戦の混乱期を経て昭和20年代後半には
全てのメーカーが廃業し存続の危機を迎えていました。
村の大切な伝統産業を消してはならないとの志から村の有志が復興に尽力し今日に繋がっているという歴史があります。
そして、日本人のライフスタイルが欧米化した今日、和装の需要は減少の一途をたどり
産地としての存続に危機感を持たざるを得ない状況にあります。
牛首紬を洋装用生地として活用し新たな市場へ参入することが、
大切な地域の伝統産業を存続していくために不可欠であると考えました。

ARLNATA(アルルナータ)と取り組む理由や展望など

2009年以降、牛首紬の新たな用途展開として洋装用広幅生地を開発し、ヨーロッパにおいて市場開拓を行ってきました。
パリで開催されている世界的生地見本市「プルミエール・ビジョン」へも出展し、
パリコレクションでも牛首紬が採用されるなど高い評価を得ています。

そのプルミエール・ビジョンの弊社ブースで出会ったのが、当時エルメスのデザイナーであった現STUDIO ALATA代表の寺西俊輔氏です。
その後、日本に里帰りする度に白山に足を運び熱心に産地を学ぶ姿勢と、何よりも他人を思いやれる人柄にすっかり惚れ込みました。
その彼が日本でSTUDIO ALATAを設立しARLNATA(アルルナータ )で
牛首紬を使用したいので協力して欲しいとの要請に「協力します!!」と即答させていただきました。

今後も寺西さんとともに新しい取り組みに積極的に関わり、
立ちはだかる様々な問題をともに考え克服して新しいマーケットを創造し産地を活性化したいと思います。

ARLNATA(アルルナータ )代表寺西 俊輔より

ARLNATA(アルルナータ )をスタートさせた理由

服づくりの世界に足を踏み入れてから約16年間にわたり、日本をはじめ世界の様々な規模のラグジュアリーメゾンでの仕事を経験し、
多くのテキスタイルに触れてきましたが、パリで牛首紬をはじめとする着物の世界と出会った時は、
この現代においてまだこれほどの手仕事が日本に残っているのかと衝撃を受けました。

しかもそれぞれの反物は、それらの産地ならではの風土や歴史を反映した手仕事によって一から作り上げられ、
同じ絹を原料としていながらも産地によって表情の異なる独特の風合いを帯びているのです。

しかしながら洋装が当たり前になった現代において、これらの反物を和装のみとして扱うことには限界があると感じ、
それであるならば着物を「テキスタイル」として扱うことでその可能性を広げていくことができれば、
より多くの人々にその良さを楽しんでもらえるのではないかと思う様になりました。

またこれらの手仕事は大量生産には到底向いておらず、
またそれが故に作り手の存在を直に感じることができることも型にはめられた量産製品とは異なる良さだと思います。

世間ではラグジュアリーと謳われている商品でもその多くが大量生産され、
世界中のどこからでもクリック一つで容易にアクセスし手に入れることができますが、その様になった現代にこそ、
人の手の温もりを感じることができる世界こそが今後のラグジュアリー的価値になるに違いないと確信しています。

ARLNATA(アルルナータ )にとっての牛首紬とは

牛首紬は自分を着物の世界へ引き込んだ大きなきっかけを作ってくれた存在です。
自身がちょうど「色」に関心があったタイミングで牛首紬と出会い、
その一見シンプルながらも複数の色を組み合わせた絶妙なバランスに感動させられました。

また、元々は捨てるべきものであった玉繭が現代においてはその希少性ゆえに価値が逆転し多くの人に愛されているという、
ストーリーにも惚れ込みました。

よくよく考えればその色使いもストーリーも何百年も前からの先人の努力や改良を重ねてきた「歴史」の蓄積の結果であり、
ただ自分が無知であっただけだと気付かされた時、ますます着物への関心が深まったのです。

私は、企業にとっての「歴史」とは「今を輝いている」を継続してきたその積み重ねだと捉えています。
「今輝いている」努力を怠った途端、その蓄積は過去の栄光と成り果て、歴史書のごとくまとめ去られてしまうのではないでしょうか。

牛首紬は現代の状況を踏まえてそれに則した変化をさせようと努力されており、未来を向いて活動されています。
弊社の様な名も無い小さな企業に協力して頂いておられるのも、
弱小ながらも未来に何かしらの可能性を見出して下さっているからだと思います。

もちろん我々の取り組みが正しいかどうかは今誰も知る由はありませんが、
そのリスクも含めて「今を輝こう」と思い行動することはとても大切なことだと思っています。

ARLNATAはまだスタートして間もないプロジェクトですが、
業種の異なる我々が組んでいるからこそ可能なことを共に実行し、向かって来るであろう困難を乗り越え、
「牛首紬」の歴史ページを更新し続けられる一助になるべく努力していきたいと思っています。

ARLNATA(アルルナータ)
の語源

ARLNATAという名前は、ANATA (あなた) とAR(L)ATA(あらた)を組み合わせた造語で、
「あなたと一緒に日本の伝統技術の新たな価値を発信していきましょう」という気持ちが込められたものです。

伝統技術の継承は、職人だけ、デザイナーだけ、で成り立つものではなく、
その価値を理解してくださる消費者の方々をも含めたみんなで輪を繋げ育てて行くことが必要だと感じています。

ヨーロッパのラグジュアリーの様な派手さはないかもしれませんが、
例えば「紬」という元来庶民が着用していたもの(野良着)が現代においては高級品として認められるようになったと言う、
ヨーロッパとは一味違う和の精神を纏った作品を是非肌で感じて頂きたいと思います。

例え需要が縮小しているとは言え、現代に到るまで残されてきているという事実は、
その技術とそれを操る人の手に敬意を払い愛し続けてきた消費者がいるということに他なりません。

我々は長く愛されてきた伝統技術の秘められた可能性をさらに解放すべく、
その時代のライフスタイルに合ったそれらの新たな形を皆様と共に探求し、発信していければと切に望んでおります。